
常駐スタッフの高度なスキルでデータ活用の内製化&脱属人化を実現
スマホアプリやWebサイトといった「非対面チャネル」の価値をいかに高めていくか。地域に根ざした金融サービスを展開する地方銀行においても、データ活用によるデジタルマーケティング活動の高度化は重要な課題となっています。そんな中、群馬銀行さまは課題解決の糸口として、メンバーズ グロースアナリティクスフォース(以下、GA)のデータ活用に特化したデジタルマーケティング人材の常駐サービス「あたかも社員®」を活用し、取り組みの推進を目指しています。今回、群馬銀行 デジタルイノベーション部の富澤仁実さまと、グロースディレクターとして同行に常駐するGAの梶山竜樹さんへのインタビューを実施。データ活用に向けた環境整備と、運用が特定の担当者に依存してしまう「属人化」を回避し、誰もがデータを武器に戦える組織へ進化しようとする取り組みについて、話を伺いました。(取材日:2026年1月9日) 行内に眠るデータを活用したい――しかし、何をすればよいのかがわからない ――まずはGAのデータ活用特化デジタルマーケティング人材常駐サービス「あたかも社員®」を導入する前に、貴行が直面していた課題を教えてください。 富澤仁実さま(以下、敬称略)当行をはじめ銀行は従来、店舗窓口などを通じた対面でのサービスを重視してきました。しかし近年では、お客さまの利便性向上や銀行業務の効率化などを目的に、Webサイトやスマホアプリによる非対面でのコミュニケーションの重視性が高まっています。これに伴い、お客さまのWebサイトやアプリ上の行動に基づく、従来の銀行データとは性質の異なる新しいデータが蓄積されるようになりました。 これらのデータを活用することで、お客さまのインサイトを深く理解し、より高度なマーケティング活動が実現できることは認識していましたが、いざ活用しようとしても、何から取り組めばよいかわからない。なぜなら、銀行には、お客さまの属性や金融取引のデータを扱う専門人材は在籍する一方で、デジタルマーケティングにおけるデータ、特にWebやアプリの行動データを活用するためのスキルやノウハウを有する人材が不足していたからです。 そのような状況を打破するために、デジタルマーケティングにおけるデータ活用の専門家の力を借りようとGAに支援を依頼しました。 なぜ専門人材が常駐する伴走型支援サービスを選んだのか ――デジタルマーケティングを高度化するのであれば、データ分析や運用業務を外部に委託する方法もあると思いますが、なぜ専門人材の常駐サービスを選んだのでしょうか。 富澤 データ活用の内製化と脱属人化を実現するためです。データ活用を進めるうえで、業務委託では、ノウハウが行内に蓄積されにくいという課題があると感じていました。外部の力を借りながら一定の成果を出すことはできても、それが組織の力として定着しにくいからです。 さらに、組織内でデータを必要とする人がいつでもデータ活用できる環境を整えること、いわばデータ活用の民主化も実現したいと考えています。 当行では、NISA(少額投資非課税制度)や住宅ローンといった各商品の担当者が、各々の担当する商品のプロモーション施策の企画から実行、効果検証までを担っています。マーケティング活動を高度化するためには、こうした担当者一人ひとりがデータを活用できるようになることが欠かせません。たとえ専門的な知識やスキルを持ち合わせていなくても、自ら非対面チャネルのデータを活用してキャンペーン施策などを検討し、効果検証を行うことができる状況にしたいと考えています。 そんな目的を果たすには、行内に常駐しながら、行内の業務や環境を十分に理解したうえでスキルトランスファー(技術移転)を進めていける、GAの伴走型支援サービスが最適だと感じました。 ――梶山さんは、2025年5月から群馬銀行さまに常駐していますが、どのような業務を担当しているのでしょうか? 梶山竜樹さん(以下、敬称略)群馬銀行さまのWebサイトとスマホアプリでの顧客行動を可視化・分析するために必要なデータを取得するにあたり、Webサイトでは「Google タグマネージャー(GTM)」のタグ設定を行い、スマホアプリについては「Adjust」を用いて設定を進めています。これらの取得データから顧客行動を可視化するために、BIツール「Looker Studio」でのダッシュボード構築を進めるとともに、マーケティング施策の効果検証用フォーマットの作成も業務スコープの1つとして取り組んでいます。 データから「変えるべき場所」を特定しアプリダウンロード数が1.3倍に! ――支援を行うにあたって難しかったことはありましたか。 梶山 常駐を開始して、まず驚いたのは、銀行の事業における顧客接点の複雑さです。 オンラインで提供しているサービスでも、お客さまがそのサービスへたどり着く経路の入口はWebサイトとは限りません。Web広告やチラシ、店頭に設置されたタブレット端末や行員の皆さんが配る名刺の裏面に印刷されたQRコードなどオフラインとオンラインの接点が混在しています。そして、適切にデータを活用するには、その経路をたどったお客さまがどのように契約に至るのかという一連の流れを正確に追うことが重要です。そこで、まずバラバラの流入経路を整理し、体系立てて計測できる「仕組み」を作ることに注力しましたが、振り返るとこれが大変な作業でしたね。 ――梶山さんが常駐しはじめてから、まだ約半年ですが、すでに成果も出ているそうですね。 富澤 取り組みにおけるモデルケースとして、当行が提供しているスマホアプリ「ぐんぎんアプリ」のランディングページにおけるダウンロード数向上を目的に、ランディングページの改善に取り組みました。GA4やAdjustで分析したデータに基づいて、ランディングページの構成やデザインを見直したところ、アプリのダウンロード数が1.3倍に増加しました。 実は、修正した内容自体は決して大掛かりではなかったのですが、数多く存在する改善ポイントの中から、より大きな効果が期待できる箇所をデータ分析によって的確に特定できたことが、成果につながったと考えています。このように、改善すべき点を的確に見極められることも、データ活用の大きな価値だと感じています。 伴走型支援で誰でもデータ活用できる環境に ――今回のプロジェクトの大きなテーマである内製化と属人化の解消についても、取り組みの詳細を教えてください。 梶山 「Looker Studio」のダッシュボードの使い方や構築方法について、まずは、新入行員を含むデジタルイノベーションの担当者の方に向けた勉強会を定期的に開催しています。 手順についてはマニュアルにまとめていますが、銀行特有の複雑なパラメータ管理が誰でもミスなく運用できるよう、Excelで「管理表」も作成しました。専門知識がなくても、プルダウンメニューから項目を選ぶだけで正しいURLが発行されるようになっています。 富澤 同じオフィス内で勤務していることで、たとえばダッシュボード作成のプロセスについて同じ画面を見ながらレクチャーを受けることができるのに加え、設計の考え方や判断のポイントまで丁寧に教えていただくことができましたし、疑問点が生じた際にはその都度相談できます。その結果、デジタルイノベーション部の新入行員が、自力でダッシュボードの構築ができるまでに成長しました。 また、マニュアルや管理表などのドキュメント作成時には、梶山さんのデータ活用に関する専門知識をもとに、正確性の担保や効率を重視したベースを作成し、私が銀行の業務や環境に運用を合わせてフローを変更したり、マーケティングの専門知識がない行員を想定して表現を噛み砕いたり、梶山さんと対話を重ねながら進めています。このような密な連携が可能なのも常駐いただいているからこそだと思います。 データを紡ぎOne-to-Oneマーケティングの実現へ ――これまでの取り組みを振り返って、梶山さんの仕事ぶりをどう評価していますか。 富澤 こちらからさまざまな要望をお伝えしていますが、いつも丁寧かつ迅速に対応いただいており、とても感謝しています。こちらの要件が漠然としたものでも、意図をくみ取りながら具現化してもらえるので大変助かっています。また、群馬銀行や金融業のことをしっかり理解しようとしてくれる姿勢も好印象です。机上の理解にとどまらず、当行のWebサイトやアプリのサービス内容や実際の画面にも目を通しながら、お客さまの視点を捉えようとしてくれる点にも、安心や信頼を感じています。 ――今後の展望についてお聞かせください。 富澤 中長期的には、お客さま1人ひとりのニーズに応じて、最適なタイミングで最適な情報を提供するOne-to-Oneマーケティングを実現したいと考えています。 梶山さんの支援のおかげで、一定程度は自力でデータを確認し、施策を展開できる環境が整いつつあります。一方で、One-to-Oneマーケティングの実現に向けては、特定の担当者に限らず、当行内でマーケティングに関わる多くのメンバーも同じようにデータを活用できる環境を整えていくことが重要だと考えています。 まずは、現在構築を進めているデータ基盤を最大限に活用して、誰もがユーザー理解ができるような環境づくりを目指します。データを確認して課題を発見し、施策を実行して、効果測定を行う――というサイクルを誰でも回せるようにしていきたいです。 梶山 今後データ活用が本格化することを考えると、Google Cloudで提供されているデータウェアハウス「BigQuery」の導入をご提案しています。現在利用している「Google アナリティクス 4(GA4)」は、データによっては保存期間があり、長期的な顧客行動の分析には「BigQuery」によるデータの長期保持が欠かせません。 これにより膨大なデータを扱うことが可能になり、AIとの連携もしやすくなります。将来的には、AIを活用してデータ分析の自動化や需要予測などを行うことも検討したいと伺っているので、なおさらおすすめしたいところですね。 富澤 私たちの考えにも沿ったありがたい提案であり、今後検討していきたいと思います。自分たちの力だけで使いこなすにはハードルが高い部分もあると感じており、支援を受けながら具体的な検討を進めていけるのはとても心強いです。専門的な知識やスキルを持つ梶山さんが同じオフィスにいて、「これを入れると、こんな未来が実現できますよ」と具体的に示してくれるのは、前に進むための大きな後押しになります。

大手企業